高校教員有志による高卒就職問題の研究会「TransactorLabo」(代表‧石井俊教諭)による公開求人の分析企画【求人票を読み解く】。なぜ、高校生の早期離職問題が解決しないのか。その根本を問います。

寄稿=石井俊(TransactorLabo代表)

そもそも早期離職率は問題視するべきものなのか

「ボーッと生きてんじゃねーよ!!!」と叱られそうなタイトルですが、今回も早期離職率から始めます。

前々回、高卒の早期離職率は産業種ごとに結構な差があること、および、離職率と給与や休日数の関連性を示唆しました。そして前回は、高卒求人相場に関する情報の不足による、ある経営者の残念な勘違いを例に挙げ、求人相場情報公開の必要性を述べました。

本稿の結びも「高卒就職市場に情報公開を進め、自然な競争の活性化を!」に落ち着くわけですが、今回はこの「早期離職率が長年ほぼ横這いなのは何故か」という視点から述べたいと思います。

高卒就職者の3年以内離職率は確かに低くはありません。少ない私の経験から言ってもそうです。外部との協議会などの場でこれが話題に上る度に高校側の責任を問われているように感じ、発言する際はとりあえず陳謝から始める癖がついてしまった先生も少なくないのではないでしょうか。

しかしですね、ちょっと調べれば、早期離職率が高いのは高卒に限ったことではないこと、平均40%といっても業種ごとに大きな開きがあること、そして、この数字が長年ほぼ横這いであることなどが分かります。

例えばこの資料。10月28日厚労省発表の統計です。例年この時期に発表され、昭和62年から35年分のデータが載っています。

 

 

いかがでしょう。高卒に関しては減少傾向ですが、まあ「ほぼ横這い」ですよね。この資料を見ていると、この早期離職率というものがそもそも問題視するべきものなのか、むしろ、当たり前なことなのではないのか、問題は別のところにあるんじゃないのか、こんな根本的な疑いさえ浮かんできます。

対策は打てど、責任の所在があいまい

先述の資料は、毎年2月に開かれる高卒就職問題検討会議(厚労省主催・高校と経済団体の代表・有識者などが参加し、高卒就職の枠組み全体の取り決めを形成する会議)で主要な協議題として使われるものです。そして、そこで打ち出された対策が現場に下ろされます。

これまで実施された対策とは以下のようなものです。

・早期離職状況調査報告(対策指導状況の報告を含む。毎春やりますよね)
・学習指導要領への「キャリア教育」の導入
・応募前職場見学の開始
・一人一社制の見直し議論から複数応募制の導入 etc…

あまり強く意識されていないかもしれませんが、高卒就職に関係する教職員ならば必ず結構な時間と労力をかけているものばかりです。教育現場は、このような努力をずっと継続している(させられている)わけですが、その労力に見合う成果が得られたかというと……まあ、どちらかといえばNOですね。悪化しているわけではないのではっきりと失策とまでは言えないでしょうが、それにしてもいつまでこの方向性で続けるのでしょうか。

今、「続ける」と書きましたが、ところで、その主体、つまりこれらの施策の責任者は誰なのでしょうか? 仮にこれを壮大な税金(あるいは教員の労力)のムダ遣いだとして責任を追及するとすれば、いったい誰を?

実ははっきりしないのです。

高卒就職の枠組みは高卒就職問題検討会議において作られます。しかし、この会議の参加者が責任を問われることはまずありません。役職に付帯するボランティア係仕事のようなものである上、1年か2年で交代するからです。

所管官庁は厚生労働省ですが、高卒就職問題に対して明確な責任感を持っているようには見えません。では文科省はどうかというと、就職に関しては疑問符が付きます。

高卒就職問題には、この早期離職率の他にも賃金がなかなか上がらないことや、教員の大きな労働負荷の問題なども含まれます。これらの諸課題改善がいつまでも進まないのは、つまるところ、それが「省またぎ」なテーマであるため、責任の所在が不明確なせいなのかもしれません。

では、どうすれば?

高卒就職情報WEB提供サービスの一般公開化と情報提供のデジタルベース化です。これにより生徒と企業側が求人情報にアクセスできるようになり、相場観の共有および競争が活発になります。まずはここから手を付けるべきだと私は思います。全ては情報の出どころから始まるからです。

次回も早期離職率に絡んだお話です。学歴別ではなく特定の産業種の問題として捉えるべきではないのか、というテーマで述べさせていただきます。