高校教員有志による高卒就職問題の研究会「TransactorLabo」(代表‧石井俊教諭)による公開求人の分析企画【求人票を読み解く】。今回は、高校生の早期離職率を読み解きます。
寄稿=石井俊(TransactorLabo代表)
そろそろ今年度も厚生労働省から新規学卒就職者の離職率(入社3年以内の離職率)の統計結果が公表される時期ですが、5割近かった新卒高校生の離職率は減少傾向にあり、最新のデータでは「36.9%」です。

さて、この数字に、「意外に少ない」「もう少し多いのでは?」と感じる先生が多いのではないでしょうか。私の感覚でも3年以上、新卒で就職した会社で働いているのは10人中5人程度です。
それもそのはず、この「36.9%」は全職種の平均ですので、産業種によって大きなばらつきがあります。次の表をご覧ください。新規学卒就職者の産業別就職後3年以内離職率のうち、離職率の高い上位5産業です。高卒も大卒も同じような産業が上位に並びます。

一方で、最も離職率が低いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」で9.2%、次いで「鉱業・採石業、砂利採取業」24.4%、「製造業」27.2%と続きます。このうち、求人数が圧倒的に多いのが製造業。10人中7人が3年以上続いているという事実は、関係者の皆さんの大健闘と見てよい数字ではないかと思います。
これほどまでに産業別で離職率に大きな差が現れるのは何故なのでしょうか。離職理由は実に多種多様で、就業形態も様々。「ハッキリこれ」と断言するのは難しいでしょうが、別のデータと重ねると見えてくることがあります。
次の表は、先出の厚生労働省の統計結果に、私たちが「高卒就職情報WEB提供サービス」の高卒公開求人票から拾い集めた集計データを組合わせたものです。これを見ると「離職率が高い産業種は年収平均が低く、休みも少ない」ということが共通項として浮かび上がってきます。

データ出典:離職率は厚生労働省2021年10月22日発表の資料。月給・年収・年間休日数はtransactorlaboによる2021年8月公開の全国高卒求人票を集計結果より
離職率が飛び抜けて低い「電気・ガス・熱供給・水道業」は月給が平均を少し下回りますが、年収は高い。つまり、ボーナスが多く、また年間休日数も平均より6.8日多いことがわかります。
これに対して「宿泊業・飲食サービス業」や「生活関連サービス業・娯楽業」は月給は平均前後ですが、年収は低めで、かつ、休みも少ない。日給で計算するとかなり低くなるでしょう。
これ以上突っ込んだ解説は控えますが、先生がたには是非これらの事実をよくご理解いただきたいと思います。早期離職を予防するためにも志望先選びの段階で求人票をしっかりと見ることが大切です。次のような点が大事になるでしょう。
・月給、ボーナス(年収)、年間休日数などの全体を相場観を掴む
・当該産業種の状況
・ピックアップした求人票群の精査(事業規模と内容、労働形態、福利厚生、育成体制、離職者数)
・その生徒がその求人企業の期待に応える資質を備えているか
しかしですね、こんなふうに文字にしてみると、就職指導・支援に携わる先生たちの仕事、責任って、本当に大変なのだなと改めて思います。みなさん普通にやってらっしゃるでしょうが……。本当にお疲れ様です。でも、まだまだ頑張りましょう!
令和4年度の高校の就職指導もそろそろ終盤。再挑戦、再々挑戦に向かう生徒の支援に入っておられる頃だろうと思います。本稿が皆さんのお役に立てれば幸いです。