高校教員有志による高卒就職問題の研究会「TransactorLabo」(代表‧石井俊教諭)による公開求人の分析企画【求人票を読み解く】。今回はいよいよ選考が始まる就活高校生へのメッセージに加え、「求人票充足率」をチェックします。

寄稿=石井俊(TransactorLabo代表)

「存在そのもの」に貴重な価値

高卒就職戦線もいよいよ本番を迎えます。就職希望の生徒が多い高校では、結団式や激励集会などを実施する頃でしょう。生徒諸君には自信を持たせてあげたいものです。

そこで今回は激励式で使える話を二つ紹介いたします。

(1)今の、そしてこれからの日本社会にとって君たちはどれだけ貴重な存在なのか

下図は8年後の2030年の人口推計です。

 

その頃、1970年生まれの私はちょうど60歳で、今年の高3生は25、6歳になっています。この人口ピラミッドを見る度に私はぞっとし、我が国のこれまでの若者への投資や少子化対策の不足を糾弾したい持ちになります。

それはさておき、今の十代二十代の若い世代が我が国の将来にとってどれほど貴重な存在であるのか、この将来人口推計を見れば誰でも分かるでしょう。

大まかに言って、今の18歳人口は50歳人口の半分しかいません。半分の人数でこの国の公共サービスや産業、経済全体を支えることが求められるわけです。

1970年生まれの私の同学年生の生徒数は約200万人でしたので、私の価値および責任分担は200万人分の1に過ぎませんでしたが、今の18歳は103万人なので、103万人分の1。ほぼ2倍、彼らの希少価値が高い。

しかも今は高卒後進学する人が8割近くなっているので、すぐに働こうとする諸君はもっともっと貴重な存在で、求人票を出している企業からすれば超有り難い存在なのです。

だから、今の能力に多少不安はあっても、「存在そのもの」にすごい価値があるのです。就職試験に向かう生徒には自信と誇りを持たせてあげたいものです。(だから高卒初任給を上げないとダメだといつも私は言っているのですが……)

採用予定数を確保できない企業がほぼ8割

(2)昨年の産業別充足率から ~充足できなかった求人がこんなにあるということ~

下図は昨年2021年7月公開の高卒求人のうち、12月に消えていたものの割合を産業別に集計した結果です。これを「求人票充足率」と呼びます。7月の求人票の公開から採用活動を始め、12月時点ではすでに採用数いっぱいに内定を出し、すでに採用を打ち切っている企業の割合です。業界ごとに大きく異なることがわかります。

 

 

金融保険業(主に地方の銀行や信用組合など)が55.2%、複合サービス業(農協等の産業協同組合が多い)が33.1%と突出して充足率が高かったのですが、それ以外は10%から18%前後にとどまっています。

つまり、それらの業種では、欲しかった人数を確保できなかった企業がほぼ8割だったことを意味します。それだけ人手不足、とくに若い世代の社員の不足が深刻化しています。生徒たちには「こういう状況だから企業は採用する気満々で待っているはず」、「だから、自分の存在に自信を持って試験に行って来い」と伝えてあげましょう。

この産業別の充足率統計は全都道府県のデータもあります。ご自分の都道府県の産業別充足率が分かるデータです。当会のホームページからダウンロードできるようにしてありますので、どうぞご活用ください。

皆さんにとって実り多い秋となるよう祈っております。