人手不足から急激に待遇が改善する建設業界。新卒大学生を上回る水準の求人も少なくない。若年労働者の確保のため、新卒高校生への期待は大きい。新卒高校生に人気の建設会社を訪ねた。

編集部=澤田晃宏

初任給20万円超えの求人がゴロゴロ……

神奈川県の普通科高校の進路担当教諭が話す。

「人手不足な業界であることはわかっていますが、急激に待遇がよくなっている。賃金が22万円を超える求人は珍しくなく、週休2日(年間休日105日)以上の求人も目立ちます」

人手不足だけではなく、建設業界はその高齢化も深刻になっている。建設就業者の約36%が55歳以上である一方、29歳以下は約12%と、次世代への技術継承が大きな課題となっている。

国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」より

近年、若手の人材確保は外国人に頼っりきりだ。建設分野に携わる外国人数は、2011年の約1万2830人から、2020年には11万898人まで増加。在留資格別に見ると技能実習生が大半で、同期間で6791人から7万6767人まで増えている。

ただ、依然として外国人の入国はコロナ前のような状況にはなく、若手の人材不足が悪化。そうした背景もあり、新卒高校生に対する期待は高まるばかり。それが、待遇面に具体的に現れ始めているというわけだ。

社員の平均年齢が32歳の建設会社を訪ねてみると……

高齢化が進む建設業界のなかでは珍しく、社員の平均年齢が32歳と若く、従業員の約6割が30代という三重県に本社を置く「マツオカ建機」を訪ねた。同社は三重県を中心に建設関連のレンタルリースをはじめ、仮設工事、ユニットハウス製造をしている。

同社仮設工事部の伊藤勝・次長は、こう話す。

マツオカ建機の伊藤次長

 

「建設業と言えば、10数年前までは一人親方(個人事業主)の集合体でした。親方に憧れ、親方の下で修業をして、そして、いつかは親方のように独立する。しかし、今は若者たちが求めるものが変わりました。安心して、長く働ける職場づくりが重要です。当社では8年ほど前から正社員化に取り組み、社会保険の加入率は100%です。週休二日も徹底し、社員教育にも力を入れています」

積極的な新卒高卒採用を進める同社の初任給は22万3800円(手当含む)。日曜日のほかに指定した日に休みをとることができ、年間休日は週休2日を上回る110日だ。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2021年)によると、大卒者の平均初任給(残業代・賞与は別)は22万5400円。大卒賃金と同じ水準だ。

同社仮設工事部で、三重県立石薬師高校出身の新原匠輝さん(23歳)は入社の動機をこう話す。

仮設工事現場の様子

「一つ上の先輩が働いていて、話を聞いたら、休みが週に2日あって、ほかの会社に比べて給料も高い。ここしかないと思いました。作業着などの支給品も多く、とても社員に気を使ってくれていると感じます。自分は社内の釣りの同好会に入っていますが、ほかにもフットサルなどの同好会などもあります。会社が費用を一部援助してくれて、仕事もプライベートも楽しいですね」

外国人と働く現場で工夫することとは?

そんな新原さんの先輩で、三重県立朝明高校出身の河内利矩さん(25歳)に、ここ数年で変わったことを聞いてみた。すると、こんな答えが返ってきた。

新原さん(上段真ん中)と河内さん(上段右)。カンボジアやベトナム出身の実習生と一緒に働く

 

「建設業界ならどこの会社も同じかと思いますが、技能実習生などの外国人労働者は増えましたね。うちの会社にもカンボジアとベトナムの実習生がいます。職長として現場を仕切ることも多く、彼らとうまくコミュニケーションをとる工夫もしています」

たとえば、ベトナム人には「たちつてと」の発音が難しいという。河内さんは「足場の倒壊を防ぐ部品〝かべつなぎ〟のことは、 〝かべちゅなぎ〟と言えば、とてもよく伝わるんです!」と、工夫の一例を教えてくれた。