学校訪問や郵送で続々と届く求人票のファイリングや手入力が進路指導現場の大きな負担になっているが、そもそも、全国の労働局管内の求人情報はすべて「高卒就職情報WEB提供サービス」に公開されている。デジタル化が叫ばれるなか、なぜ、活用が進まないのか。
編集部=澤田晃宏
詳細な検索が可能。それでも使わない理由とは?
厚生労働省職業安定局が運営する「高卒就職情報WEB提供サービス」(以下、高卒WEBサービスと表記)には、全国の労働局管内の求人情報が掲載され、職種や就業場所はもちろん、賃金や年間休日などの詳細な条件を設定し、山のような求人票のなかから希望にあった求人票を見つけ出すことができる。
例えば、最低賃金が最も安い高知県で、平均を大きく上回る月額賃金20万円以上の求人などないと思われるかもしれないが、高卒WEBサービスで検索すると53件がヒットする(7月12日時点)。
月額賃金20万円以上に加え、詳細条件に週休2日の基準となる「年間休日105日以上」を追加しても、18件がヒットした。
求人票がファイリングされた分厚いファイルから見つけ出すのは至難の業だが、ネット検索ならものの数分で見つけ出すことができる。サイト上からPDF化された求人票のダウンロードも可能で、その場でプリントして生徒に渡すことも可能だ。
ただ、高卒WEBサービスが進路指導現場で十分に活用されているとは言えない。北陸地方のある進路指導担当教諭はこう話す。
また、神奈川県下の定時制高校の進路指導教諭はこう話す。
生徒は可能だが、保護者にログイン権なし
もっとも、高卒WEBサービスの活用が広がらない背景に、そもそも「教職員しかログインできない」と思っている進路指導担当者が少なくないという事実もある。
高卒WEBサービスのIDとパスワードは、毎年求人票の閲覧が解禁される7月1日に新しくなり、新たなIDとパスワードは厚生労働省から全国の労働局を通し、各学校に付与される。
そうして、高卒WEBサービスにログインできるようになるのだが、そのログイン権限は生徒にもある。
厚生労働省の若年者就職援助係の担当者はこう説明する。
要は、IDとパスワードを付与された生徒が、自宅のパソコンやタブレットなどで求人票の閲覧をすることは可能なのだ。ただ、自宅で保護者の意見を聞きながら求人票を閲覧し、進路を決めていくことは効果的に思えるが、保護者には高卒WEBサービスのログイン権がないという。
国をあげてデジタル化を進めるいま、高卒求人WEBサービスのさらなる活用とアップデートが求められる。ファイリングや求人情報の入力に割く時間がはぶければ、より個々の生徒にあった進路指導ができるはずだ。