私は約15年間、週刊誌記者として働いてきましたが、高校中退という出版業界では異色の経歴で、日頃から自分の役割を考えていました。たどり着いたのが教育です。多くの人の関心ごとで、雑誌でも特集企画が頻繁に組まれますが、編集長やデスクなどの管理職はもちろん、外部スタッフまで難関大学を卒業した「高学歴集団」です。発信される情報のなかに「高校卒業後に就職する」などといった選択肢はありません。

しかし、間近でも高校卒業後に実践的な職業教育をする専門学校への進学者が約24%、就職する学生が約16%います(2021年3月卒)。2020年度から高等教育の就学支援新制度が始まり、経済的事由で進学を断念した学生のなかから、同制度を利用した専門学校を中心とした進路変更も増えています。

ただ、進学校に対する情報があふれる一方、進路多様校(就職者が在籍する高校)に向けた進路情報が十分にあるとは言えません。そうして、同じ問題意識を抱えていた高校生のための就職求人サイト「ハリケンナビ」の運営などを行うハリアー研究所のCSR事業(企業の社会的責任)として、2019年に進路多様校に特化した進路情報誌「高卒進路」を創刊しました。教育現場からの評判も良く、支援者も現れてきたことから、持続可能な情報提供の形を模索し、NPO法人の設立に至りました。進路指導現場にとどまらず、広く一般に進路多様校の状況を伝え、社会への理解も深めます。

特定非営利活動法人 進路指導 代表理事/澤田晃宏
【代表理事 プロフィール】
1981年、兵庫県神戸市出身。高校中退後、建設現場作業員、出版社勤務、留学斡旋会社勤務、週刊誌『AERA』(朝日新聞出版)記者などを経て、フリー。2019年に進路多様校向け進路情報誌『高卒進路』(ハリアー研究所)を創刊、編集長に就任。高卒就職、専門学校、外国人労働者、地方行政などを取材。著書に『ルポ技能実習生』(ちくま新書)など
澤田晃宏